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心臓血管病と治療
心臓血管病にはさまざまなものがあります。ここでは心臓病、血管病の原因や症状、治療方法について簡単に解説いたします。
当科においても様々な心臓血管病の診断や治療をおこなっておりますが、患者様の疾患の状況、治療内容や手術内容によっては、循環器内科で診断した後、院内他診療科または他院の専門施設をご紹介させていただいております。
冠動脈疾患:狭心症、心筋梗塞
冠動脈疾患:狭心症、心筋梗塞とは
心臓の筋肉に血液を送り込み、酸素と栄養を届ける大切な働きをしているのが心臓を取り巻く冠動脈です。狭心症は、この冠動脈が、生活習慣や老化によるコレステロールや中性脂肪が血管内に溜まる事が原因で血管が詰まり、血流が心筋に十分行き渡らない血流傷害の状態を言います。

胸に痛みや重苦しさを感じ、圧迫されたり、しめつけられたりするような痛みが5~6分間続きます。発作が30分以上続く場合は心筋梗塞の疑いがあります。また発作が頻繁に起きるときは心筋梗塞になりかかっていると考えられます。

狭心症の原因は、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙や肥満あるいはストレスが挙げられます。狭心症のカテーテル検査や運動負荷心筋シンチグラフィーなどで診断を確定する必要があります。

救急車を呼ぶタイミング
  1. 胸が押しつぶされる様な痛み、嘔吐、息切れ、大量の冷汗を体験したとき
  2. 以前狭心症と診断された時と同じ痛みが10分以上続くとき
経皮的冠動脈形成術(風船療法)・冠動脈ステント治療
風船治療では、先端に風船(バルーン)をつけた細いカテーテルを狭くなった冠動脈まで入れます。この風船をふくらませることで、冠動脈を大きく拡げます。ステントはステンレスなどの金属製の小さい網目模様の筒状構造をしています。これを風船治療に使う風船でふくらませます。 風船治療はバルーンで狭窄部位を拡げるだけですが、ステントで拡げると、ステントが支柱のように固定されますから、しっかりと拡張できます。植え込まれたステントは風船治療に比べ次のような利点があります。
風船治療では30-40%で再狭窄を起こしますが、ステント治療では再狭窄率が20-30%まで低下しました。最近の薬物溶出性ステント(Drug Eluting Stent: DES)はステント表面に細胞増殖を抑制する薬剤をコーティングしたステントで、再狭窄率も飛躍的に減少しましたが、0%になった訳ではありません。ステント内が血栓で閉塞しないように血液サラサラの薬を服用する必要があります。

ステント治療の欠点は、冠動脈疾患の方がガン年齢でもあることです。しばしば経過中にポリープやガンが発見され、ポリープ摘出や外科手術が必要になることがあります。手術中の出血を抑える為、血液サラサラの薬剤を中止しなければなりません。DESステントを植え込んでから時間が十分経っていないと、周術期にステントが血栓閉塞して心筋梗塞を起こした例が報告されています。このことを十分理解して、植え込む決断をする必要があります。アレルギー体質、肝障害、消化性潰瘍などの理由で血液サラサラの薬が飲めない場合は、十分注意する必要があります。
冠動脈バイパス手術CABG
狭心症に対する治療方針は、まず心臓カテーテル検査を行い、冠動脈病変の重症度を評価することから始まります。心筋梗塞による突然死や心不全を避けなければなりません。病状が安定している方には薬物療法が中心です。しかし薬物療法が無効で、心筋梗塞の危険がある場合に循環器医による経皮的冠動脈形成術(PTCA)が行われます。わが国は世界の中で格段にカテーテル治療が多い国です。これらカテーテルによる治療法が万能ではありません。狭窄した冠動脈の遠位側に大動脈(または内胸動脈)から血管をつなぎ、狭窄部をバイパスすることで血流量の維持する冠動脈バイパス手術が必要な方もいます。人工心肺装置による体外循環を使用し心臓を行うのが一般的でしたが、医療機材の進歩の中で、スタビライザーという器具が開発されました。これを使うと心臓の表面の動きを止めることができ、心臓が動いている状態のままで心臓表面の冠動脈にバイパスすることが可能となりました。この方法をオフポンプCABGと言います。
オフポンプCABGの利点は、人工心肺の副作用を回避ないしは軽減できることです。欠点としては心臓を圧迫することで心臓機能が低下し、低血圧や不整脈を起こすことでしょう。特に術者の技量が要求されること手術です。
カテーテル治療は、病気の血管に治療を施します。一方、冠動脈バイパス手術は病気の部位を避け、比較的健康な血管にバイパスします。手術直後のリスクを乗り越えると、手術した方の改善度はカテーテル治療より良いという報告もでています。
心不全
心不全とは
心臓のポンプ機能が障害されて全身に十分、血液を送り込めなくなった状態を言います。その原因は心筋梗塞、特発性心筋症、心臓弁膜症、高血圧症などです。全身へ送る血液量(酸素量)が減ったのが原因で、「疲れやすい」「だるい」「動悸がする」などの症状がでます。また血液を送り出す能力が低下すると肺に血液うっ滞が起こり、息切れや呼吸困難などの呼吸器症状がでてきます。肺のうっ血が強いと肺での酸素取り込みが低下して、呼吸苦がひどくなり、人工呼吸が必要になります。体の各部分にうっ滞が起こると、顔や足のむくみが生じます。

慢性心不全の治療は薬物療法です。通常利尿剤、強心剤、β遮断剤、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)を組み合わせて処方します。弁膜症が原因なら、弁の手術を、狭心症や心筋梗塞が原因であれば冠動脈形成術や冠動脈バイパス術が必要です。さらに心臓の電気信号の伝わりが悪い為心機能が悪化した場合は、心臓再同期療法があります。

参考サイト:心不全.com
心房細動
心房細動とは
心房細動は電気信号がバラバラに発生するため、心房全体が細かくふるえ、心房のまとまった収縮と弛緩がなくなる状態です。健康な人でも飲酒後の翌朝やストレスによって起こることがあります。

心房細動が続くと、心臓のポンプ機能が低下し心不全を起こしたり、左心房の中に血栓ができ、それが脳や全身へ飛んで血管につまると、脳梗塞など血栓塞栓症の原因にもなりますので、医療機関の受診が必要です。元巨人軍の長嶋茂雄やサッカーのオシムさん、また群馬県出身の総理大臣の小渕さんも脳梗塞に倒れました。

甲状腺機能亢進症、高血圧、虚血性心疾患、心不全があると心房細動を起こしやすく、また加齢にともなって増加するため、この不整脈の発生頻度は増え続けています。

治療は、誘因の排除、心室レートのコントロール、再発の予防、塞栓症予防の4つの柱からなります。甲状腺機能亢進症などの要因があれば、治療します。心房細動による頻脈が続くと心不全を起こす為、脈を下げるための薬を内服します。動脈塞栓のリスクの高い人には、ワーファリン治療が原則です。ワーファリンは非専門医には使いにくい薬剤ですが、一度脳梗塞を起こすとさまざまな合併症から死亡率が高くなります。禁忌でない限りワーファリンの内服が望ましいでしょう。

心房細動や心房の頻拍が持続すると、心房筋に変化が起こります。これが長期間持続すると心房筋が元に戻らない構造的な不可逆的変化が生じるため、心房細動が正常洞調律に復帰しなくなります。
心房細動の手術(メイズ手術)
メイズ手術の「メイズ」とは迷路のことです。心房の筋肉を迷路状に一旦切開して再び縫合するので、メイズと呼ばれます。通常メイズ手術だけすることはありません。循環器医がカテーテルを用いた治療が可能だからです(カテーテルアブレーションと呼びます)。心臓弁膜症で弁置換や弁形成術を行う際に同時にメイズ手術を行います。弁が治り心機能が改善するだけでなく、心房細動も治り規則正しい脈拍に戻り可能性があります。心房細動が正常な脈に戻ることで、術後脳梗塞の合併率も軽減することが可能です。

オリジナルメイズ手術は心臓の裏の心房を切開するため術後出血が大きな問題でしたが、現在は双極高周波焼灼システムなど、低侵襲化を行い、以前と比べ安全に手術することが可能となりました。
上室性頻拍症
上室性頻拍症とは
心臓の電気信号がグルグル回りをしている状態です。突然、発作的に起こり、また突然、消失することが特徴です。めまいや失神を起こすことがあります。診断は発作時の心電図が役に立ちます。確定診断には、心臓の電気生理学的検査(心臓カテーテルによる不整脈検査)が必要です。治療は薬物治療ですが、反応しない場合などはカテーテルアブレーションというカテーテル手術で治療します。
弁膜症
弁膜症とは
心臓には血液の逆流を防ぐため、4つの弁があります。さまざまな原因によって血液の流れが妨げられ心臓の活動に支障をきたした病気を弁膜症といいます。弁の開きが悪くなり血液の流れが妨げられる「狭窄」と、弁の閉じ方が不完全なために血液が逆流してしまう「閉鎖不全」があります。弁膜症の原因には、かつては感染症のひとつであるリウマチ熱が多かったのですが今は減少し、高齢化に伴う大動脈弁の硬化「大動脈弁狭窄症」や弁の組織が弱くなって起きる「僧帽弁閉鎖不全」が増加しています。

むくみ、息切れ、呼吸困難、体重増加などの心不全症状、不整脈、血栓塞栓症による脳梗塞や感染性心内膜炎で発見されることが多いようです。感染性心内膜炎は、弁に対する細菌感染症です。弁の破壊による閉鎖不全症、細菌の塊が全身に飛ぶ塞栓症など重症化することが多く、手術治療が必要になります。心臓超音波検査と心臓カテーテル検査で治療方針を決めます。弁の異常自体は薬で治すことができません。軽症の場合は、内服薬で経過を見ますが、治療の基本は弁に対する直接手術になります。最近は心機能温存のため、以前と比べ早い時期に手術する傾向にあります。

重症度に関らず、弁膜症では感染性心内膜炎にかかりやすいため、抜歯など観血的治療および処置を行う場合、予防的抗生剤の投与が必要です。

参考サイト:心臓弁膜症サイト
弁膜症の手術
壊れた弁を治すには、心臓手術しかありません。手術には、人工心肺装置や心筋保護などの体外循環法が必要です。 弁の手術には、弁形成術と弁置換術の2種類があります。僧帽弁閉鎖不全症では、弁形成術を第一選択にしますが、弁の損傷がひどい場合は弁置換術になります。最終的には、手術時に実際に弁を見て決定します。大動脈弁の手術は、弁置換術が一般的です。一部の施設で弁形成を試みていますが、その成績はまだ安定していません。三尖弁閉鎖不全症でも弁形成術が第一選択となっています。単独の弁閉鎖不全症に対し、低侵襲心臓手術(MICS)を始めました。
人工弁にはウシやブタの生体組織で作った生体弁とチタンやパイロライトカーボンなどの金属でできた機械弁があります。生体弁は血栓の心配が少ない為、ワーファリンという抗凝固剤を飲む必要がありませんが、耐久年数は10-20年です。一方機械弁は血栓の心配から恒久的にワーファリンを飲む必要がありますが、弁の劣化や破損が生じることはきわめて少なく、耐久年数は半永久です。70歳以上の方には生体弁を薦めます。但し、心房細動という不整脈を術前から合併している方は動脈血栓塞栓症を避ける為に人工弁の種類に関らずワーファリンを服用する必要があります。
下肢静脈瘤
下肢静脈瘤とは
人間は立ったときに重力による影響で血液が心臓から足へ移動しようとします。この立ったときの血液の逆流を防ぐ弁が静脈についています。この逆流防止弁は、足の付け根や膝の裏など太い静脈の合流部で壊れやすく、これが原因で血液は逆流し、立ったときに足の下の方に血液が溜まり、こぶのように膨らみます。

症状は、足がむくむ、痛む、だるい、重い、疲れやすい、こむらがえりと病状によってさまざまです。

治療は圧迫療法が第一です。医療用の弾性ストッキングで、下肢に適度な圧力を与えることで下肢に余分な血液がたまることを予防します。血液貯留の予防であり、病状の進行を遅らせ、症状を軽減する効果を期待するもので、静脈瘤自体を治すものではありません。次に硬化療法があります。硬化剤という薬剤を静脈瘤内に注射して、静脈の内面を癒着させ、血栓で詰めてしまう方法です。太い静脈瘤では再発率が高く不適です。利点は繰り返し行え、入院の必要がないことです。ストリッピング手術(静脈抜去手術)は下肢静脈瘤の根治的な治療法で、弁不全をおこしている静脈を引き抜いてしまう手技です。入院の場合(5~7日)は、全身麻酔あるいは腰椎麻酔(局所麻酔)で行います。再発率が低く、一番確実な治療法ですが、知覚神経にダメージを与えることが欠点です。その中間的治療として高位結さつ術+硬化療法があります。

参考サイト:下肢静脈瘤について
閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症とは
手や足の血管が動脈硬化により、血管が狭くなったり、血管が詰まり、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気です。「手足が冷たい」「手足がしびれる」「歩くとふくらはぎに痛みが出る」などの症状がでます。

動脈硬化の原因は不明ですが、高脂血症が最も重要な関係を持っています。他に高血圧、喫煙、糖尿病なども大きく影響します。

血管造影や超音波検査で血管内腔の狭窄度を評価します。この病気を患っている方の中に、冠動脈疾患を隠しもっていることがあり、心臓の精密検査も同時に行った方が良いでしょう。

治療には運動療法や薬物療法(血液をサラサラにしたり、血管を拡げたりすることによって血液の流れを改善する薬)があります。これで不十分な場合はカテーテルを使った血管内治療(バルーン法、ステント挿入法)やバイパス手術で血流を保つ必要があります。この病気では禁煙は不可欠です。たばこのニコチンや一酸化炭素は血管の内膜(血液に面している細胞)にとても悪い影響を与える為、禁煙できない方は上記の治療の効果は期待できません。
経皮的冠動脈形成術(風船療法)
腹部大動脈瘤
腹部大動脈瘤とは
腹部大動脈が拡張した病気です。原因は、動脈硬化が最も多いと言われています。症状に乏しく、健康診断や他の病気の診察中に偶然見つかることが多い病気です。手術の適応はCT上の最大横径によって判断します。腹部では50mm以上(40mm以上)がだいたいの目安です。これ以上大きくなると破裂しやすいからです。またそれより小さくても拡大速度が早ければ手術の適応となります。人間、生まれ持った血管の厚さがあります。血管が拡張すれば風船と同じように壁の厚さは薄くなり、限界を超えれば、前兆なしに破裂する危険があります。

最近はお腹を切らずに治すステントグラフト内挿術という方法があります。肺機能が悪い方、高齢者、再手術など通常の手術が困難な方がよい適応となります。また大動脈瘤の形も重要な因子となります。

参考サイト:大動脈瘤のはなし
腹部大動脈瘤の手術
大動脈瘤自体の治療はありません。大動脈瘤が大きければ破裂の危険が大きくなります。一般的に大動脈瘤の外径が55~60mm以上になると破裂の危険性が大きいと言われます。一旦破裂すると、手術しても死亡は5割以上です。ゆえに手術の目的は破裂の予防になります。
全身麻酔を行い、腹部を正中で開腹し、お腹の一番奥にある腹部大動脈を人工血管で換え、破裂の危険を回避します。
合併症には出血、腎不全、感染症、血栓塞栓症、下半身麻痺、勃起不全(インポテンツ)などがあります。

最近は「ステントグラフト手術」というより低侵襲的治療が開発されました。足の動脈を切開して、小さく折りたたんだステント付きの人工血管をレントゲン透視下に腹部大動脈の中に挿入し、瘤の位置で留置固定する方法です。
深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症
深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症とは
深部静脈血栓症は、主に大腿や骨盤内の静脈に血栓をきたすものです。我が国でも増加傾向にあり、特に60歳以上の女性に多いようです。最近では、旅客機などの狭い場所に長時間押し込められたことによる下肢の静脈うっ血が原因で深部静脈血栓症を起こし、肺塞栓を合併して呼吸困難、ショック状態に陥る「エコノミークラス症候群」が知られるようになりました。例えば2002年に日本人サッカー選手の高原直泰が、旅客機での移動に際してビジネスクラスを利用して発病したこともあり、エコノミークラス以外なら安全ということではありません。2004年の新潟県中越地震では、自動車の中で避難生活を送る人たちの中に、エコノミークラス症候群の疑いで死亡するケースが相次ぎました。

脱水、感染、旅行・長期臥床・手術などによる血流鬱滞、経口避妊薬、抗リン脂質抗体症候群などが原因です。この血栓が血流に乗って肺へ流れ、肺動脈が詰まると、肺血栓塞栓症となります。肺血栓塞栓症は突然死をきたす重篤な疾患で、死亡率は10~30%と報告されています。死亡例の多くが発症直後の突然死です。そのため発症する前に予防することが非常に重要です。 低酸素血症や低血圧で本疾患を疑い、心臓エコーで心臓の負荷を確認します。確定診断にはD-ダイマー測定(血液検査)と造影CTが用いられます。

治療は急性期の血栓溶解療法とその後の抗凝固療法が中心です。血栓溶解療法は血栓を急速に改善させ、血行動態を著明に改善させますが、出血という重篤な合併症があるため、その適応は限定されます。治療が奏効すれば生命予後は良好ですが、症状消失後も再発のおそれがあり、抗凝固療法を続ける必要があります。
急性動脈閉塞症
急性動脈閉塞症とは
不整脈を伴う心臓弁膜症、心筋梗塞などで心臓内に血の塊(血栓)ができやすく、これが血流にのって流れて動脈にひっかかり、急に動脈内の血流が障害されます。動脈硬化や動脈の炎症などにより血栓ができることもあります。

症状は、突然、血管が詰まった足に激痛が起こり、蒼白となり、冷たくなります。進行するとチアノーゼが生じ、麻痺を起こし(神経も障害された)、壊疽を起こします。

治療は、手術で塞栓や血栓を除去することで、発症後6時間が目安です。6時間以降は組織障害が重篤となり患足の切断が必要となります。たとえ病気の足を切断しても、治療が遅れれば急性腎不全で死亡する怖い病気です。
心臓ペースメーカー
心臓ペースメーカー
心臓ペースメーカーは、脈が病的に遅くなる徐脈の治療に用いられます。徐脈の主な原因は、興奮信号を発する機能が悪くなる洞不全症候群と、電気の伝導が悪くなる伝導障害に分けられます。このような徐脈に対する最も有効な方法は、ペースメーカー植え込み術です。

手術の方法
通常、歯医者さんと同じ局所麻酔で行います。このため手術中、意識は普通にあります。多くは利き手の反対側で鎖骨の下方に「皮下ポケット」を作り、ここにペースメーカーの本体を収納します。ペースメーカーのリード(導線)は鎖骨の奥にある鎖骨下静脈を通して、レントゲンでみながら心臓の右心房、または右心室へ挿入し固定します。手術時間は1~3時間です。肩よりも上に腕を上げるバンザイのような姿勢は、1~2か月間は控えましょう。リードが移動し、心臓の筋肉から抜けてしまいます。
合併症
出血、感染、気胸、心タンポナーデ(心臓周囲への出血)、リードの移動などがあります。ペースメーカーは異物の為、感染に弱く、傷の感染には十分注意しなければなりません。